「うちには、学生に見せられるような魅力がない」——採用のご相談で、埼玉県内の経営者から最も多く聞く言葉です。しかし、実際に就職活動中の学生に県内企業のサイトを1社ずつ見てもらったところ、まったく逆の結論が出ました。

結論からお伝えします。多くの企業は「魅力がない」のではなく、「持っている魅力がWebに載っていない」だけでした。本記事では、埼玉県内の中小企業35社を就活生が実際に閲覧して評価した独自調査の結果と、そこから見えた共通課題・改善の打ち手を公開します。

この記事でわかること

  • 埼玉県内35社を学生が実際に見て分かった、業種を問わず共通する課題トップ10
  • 15項目の5段階評価で見えた、「できている項目」と「全社的に手つかずの項目」
  • 学生が採用サイトで見ている、たった3つの問い
  • コストをかけずに明日から着手できる改善アクション8つ(優先順位つき)

調査の概要|就活生が、埼玉県内35社のサイトを1社ずつ見た

この調査は、当社のホワイトペーパー制作にご協力いただいた企業へのお礼としてお返ししたフィードバック資料を、横断的に集計し直したものです。調査会社による一般的なアンケートではなく、実際に就職活動中の学生が、実在する埼玉県内の企業のサイトを1社ずつ開いて、率直に感じたことを書き出したものである点が最大の特徴です。

項目 内容
調査対象 埼玉県内に本社を置く中小企業35社(建設・製造・運輸物流・福祉介護・IT・飲食・教育サービス・保育・不動産 ほか)
調査方法 就職活動中の学生が、各社のコーポレートサイトと新卒採用サイトを実際に閲覧し、所感を記述。うち12社については15項目・5段階での評価も実施(計174評価)
実施時期 2026年
集計 定性コメントは指摘テーマ単位で計数(1社が複数テーマに該当)。スコアは15項目評価を実施した12社を対象に平均を算出
掲載にあたって
ご協力いただいた企業が特定されないよう、本記事では社名・担当者名をすべて伏せ、業種のみを記載しています。学生のコメントも、企業が特定できる固有名詞を除いたうえで引用しています。

結論|業種が違っても、学生が引っかかる場所はほぼ同じ

建設・製造・物流・介護・IT・飲食と業種はバラバラですが、学生の指摘の中身は驚くほど揃っていました。共通する構造はこうです。

どの企業も「何をしている会社か」(事業内容)は伝えられている。一方で「誰と働くのか」「入社後どう育つのか」「その先どうなるのか」が抜け落ちている。つまり、会社の説明はできているが、“自分がそこで働く姿”を学生に想像させる材料がない——これが35社に共通する最大の穴でした。

学生の指摘を分類した「共通課題ランキング」

指摘テーマ 該当社数 指摘の内容
「人」が見えない 22社 社員インタビュー・働く姿の写真・社員の生の声がない/少ない/紹介する層が偏っている
仕事内容が具体的でない 12社 「1日の流れ」「1年目に任される仕事」がなく、自分が働くイメージを持てない
教育体制が見えない 11社 研修・OJTの中身が不明。未経験から入る学生の不安が解消されない
理念(MVV)がない/伝わらない 10社 未策定、または抽象的・難解で、自分との相性を判断できない
キャリアの先が見えない 8社 昇進の基準、最年少の役職者、目標にできるロールモデルが分からない
採用情報への導線が弱い 7社 エントリーボタンがない/連絡手段が電話のみ/新卒採用の有無自体が分からない
専門用語の壁 6社 業界用語が多く、理解しようとする前に離脱してしまう
疑問をその場で解けない 6社 FAQやチャットがなく、電話・メールで問い合わせるしか手段がない
数字による情報開示がない 5社 離職率・男女比・年齢構成といった客観的なデータが載っていない
福利厚生が「制度の羅列」 5社 制度は書いてあるが、実際にどう使われているかの事例・社員の声がない

15項目評価で分かった「できている項目」と「全社的に手つかずの項目」

15項目の5段階評価を実施した12社・計174評価を集計し、項目別の平均スコアを低い順に並べたものが下図です(が平均3.0点未満の弱点項目)。全項目の平均は3.51点でした。

若手の登用実績(最年少の役職者が分かるか)2.00
チャット・Q&Aなど、その場で疑問を解ける仕組み2.25
教育体制(研修・OJTの中身)2.73
数字による情報開示(離職率・男女比など)2.92
福利厚生が実際に使われている事例3.08
理念に基づく具体的な事業・取り組みの例3.50
選考フローの分かりやすさ3.58
「誰に何を提供している会社か」の明確さ3.64
理念・求める人物像の記載3.75
エントリーへの導線3.83
社内の雰囲気が伝わるか(写真・動画)3.92
コラム・SNSでの発信4.10
情報の鮮度(更新されているか)4.17
事業内容の分かりやすさ4.17
募集要項の記載4.75

※15項目5段階評価を実施した12社の平均。n=12のため参考値として掲載しています。

この図から読み取れること

  • 上位4項目(募集要項・事業内容・情報の鮮度・SNS発信)は、すでにできている。「発信量が足りない」という問題ではありませんでした。
  • 下位4項目(若手の登用実績・Q&A・教育体制・数字の開示)は、ほぼ全社が手つかず。若手の登用実績は12社中、4点以上をつけられた企業がゼロ、チャット・Q&Aは12社中7社が1〜2点でした。逆に言えば、ここは少し手を入れるだけで他社と差がつく領域です。
  • 募集要項(4.75点/1〜2点をつけられた企業はゼロ)と教育体制(2.73点)のギャップが象徴的です。「条件は書いてあるが、育て方は書いていない」——これが県内企業の採用サイトの平均像でした。

なお、12社の平均スコアは最高4.40点・最低2.27点と幅がありましたが、業種と点数のあいだに明確な相関は見られませんでした。「建設だから」「介護だから」学生に伝わりにくい、ということではなく、スコアの差は採用サイトにどれだけ手をかけてきたかで説明がつく、というのが実態です。つまり、業種を理由に諦める必要はありません。

学生が採用サイトで見ているのは、結局3つの問いだけ

興味深いのは、フィードバックを書いた学生がそれぞれ違うフォーマットを使っていたにもかかわらず、切り口が同じ3つの問いに収束していたことです。採用サイトに載せる情報を考えるとき、この3つに答えられているかをチェックリストとして使えます。

問い①どんな仕事をするのか

事業内容ではなく「自分の1日」です。「幅広く手がけている会社だからこそ、自分の担当範囲が分からない」(不動産)、「主軸である運転手の仕事内容に触れられていない」(運輸)といった指摘が典型でした。会社の説明と、仕事の説明は別物として書く必要があります。

問い②どんな人と働くのか

35社中22社で指摘された最頻出項目です。学生からは「中小企業は口コミサイトの情報が少なく、HPに載っている“人”の情報が唯一の判断材料になる」という指摘が出ています。大手と違い、中小企業では採用サイトが人物情報の唯一の入手先になる——これは中小企業ならではの構造です。

問い③自分と合うのか(理念)

学生が見ているのは理念そのものより「理念が実際の行動になっているか」でした。「社是が形だけではないかという疑念が残る」(卸売)、「理念は掲げられているが、それを体現した具体例がHPにない」(製造)など、言葉と実態のズレを敏感に見ています。

前提安定して長く働けるか

3つの問いの土台にあるのがこれです。コロナ禍を高校・大学時代に経験した世代であることに加え、AIによる仕事の代替への不安が背景にあり、8社で「創業◯年の歴史」「地域に根ざしていること」「AIに代替されにくい技術職であること」が評価点として挙げられていました。

最大の発見|一番の魅力が、Webに載っていない

今回の調査で最も示唆的だったのは、学生が最も高く評価したのが「電話をかけたときの人の対応」だったという点です。5社以上で、同じ趣旨のコメントが出ていました。

「電話対応がフレンドリーで、初めて企業へ電話することが楽しいと感じた」(製造業)
「電話応対から社員の人柄の良さ・気遣いが伝わってきた。それがHP上で伝わっておらず、もったいない」(卸売業)
「ご担当の方の優しく丁寧な対応が強く印象に残った」(建設業)

これらの企業は本当は魅力があるのに、それがWeb上に一切表現されていない状態にありました。「魅力がない」のではなく「魅力が翻訳されていない」——これが、今回の調査で最も強く出た結論です。

同じ構造は、素材の置き場所にも起きている

「持っているのに、学生が見る場所に置かれていない」という現象は、電話対応だけではありませんでした。

  • 数字や理念がコーポレートサイトにはあるのに、採用サイトに転載されていない(運輸)
  • 求人媒体に載せた刺さるキャッチコピーが自社サイトには載っていない(観光)
  • 最大の強みである地域密着が採用ページ側では語られていない(製造)

いずれも新しく素材を作る必要はなく、置き直すだけで改善するケースです。採用サイトの改善というと大きなリニューアルを想像しがちですが、まず着手すべきはここです。

評価が高かった企業に共通していた6つの打ち手

一方で、学生から高く評価された企業には、共通する打ち手がありました。

打ち手 実践社数 具体的な内容
写真・動画で「素の雰囲気」を出す 9社 業務ごとに写真と動画を分類して掲載/YouTubeチャンネルの運用/BBQ・社員旅行など社内イベントの写真を載せる
歴史・地域密着を「安定性」として語る 8社 創業50年〜100年という年数を、単なる沿革ではなく「長く働ける会社である根拠」として見せている
事業内容をフロー図で説明する 6社 自社の商流やサービスの流れを1枚の図にする。専門用語の壁を越える最短手段
理念を実際の取り組みとセットで見せる 6社 「理念に基づいて始めた事業」「継続している社会貢献活動」を並べて掲載している
数字を一覧で可視化する 4社 「数字で見る◯◯」というページを設け、平均年齢・男女比・定着率などをまとめている
体験・参加型のコンテンツを用意する 2社 ゲーム形式のインターン、実際の乗車・現場体験、インターンの様子を見せる動画など

特に「他社にない一手」として評価されていた3例

  • 「未来の後輩へ」の一言を先輩社員に書いてもらう(製造)——内定を承諾するか迷っている学生への、最後の一押しになるコンテンツとして評価されていました。
  • 「“好き”を仕事にする」という切り口で職種を語る(住宅)——専門知識がない文系・未経験の学生に対して、入口のハードルを下げる表現として機能していました。
  • 最寄り駅から社屋、出迎える社員までを見せる動画(IT)——面接や説明会に行くときの不安を先回りして解消する内容で、「ここまでしてくれる会社は他になかった」と評価されていました。

いずれも、制作費をかけた立派なコンテンツではなく「学生が何に不安を感じるかを想像して先回りした」という点で共通しています。

明日から着手できる改善アクション(優先順位つき)

調査結果をふまえ、費用対効果が高い順に改善アクションを整理しました。上から順に着手すれば、今回の低スコア項目はおおむね埋まります。

  1. 社員インタビューを3人分載せる(若手・中堅・ベテラン)
    最頻出の指摘は「人が見えない」(22社)。まず1人ではなく3人載せることが重要です。学生は「自分に近い先輩」と「数年後の姿」と「会社の芯」を同時に見たいためです。文章が難しければ、質問5つに答えてもらう形式で十分です。
  2. 「入社1年目の1日」と「1年目に任される仕事」を1ページ書く
    事業内容の説明ではなく「自分の1日」が知りたい、という指摘が12社で出ています。9時から18時までを箇条書きにするだけでも、応募のハードルは大きく下がります。
  3. 研修・OJTの中身を月単位のスケジュールで書く
    教育体制の平均は2.73点と全項目で3番目に低い一方、募集要項は4.75点。「条件は書いてあるが、育て方は書いていない」のが県内企業の共通課題です。「入社1ヶ月目:座学研修」「3ヶ月目:先輩に同行」程度の粒度で構いません。
  4. 数字を5つだけ出す
    平均年齢・男女比・新卒定着率・有給取得率・平均残業時間。この5つを1ページにまとめるだけで、平均2.92点の項目が一気に埋まります。数字が良くない項目は無理に出さず、出せるものから始めて問題ありません。
  5. 最年少の役職者を1人紹介する
    15項目中最低スコア(2.00点)で、4点以上をつけられた企業がゼロだった項目です。裏を返せば、ここを埋めるだけで他社との差が最も明確につきます。
  6. よくある質問を10問だけ置く
    チャット・Q&Aは12社中7社が1〜2点。「未経験でも大丈夫ですか」「転勤はありますか」など、説明会で実際に聞かれた質問をそのまま10問載せれば十分です。
  7. 電話・面談で褒められた言葉を、そのままサイトに載せる
    後述するとおり、学生が最も高く評価したのは「電話をかけたときの人の対応」でした。その評価はWeb上にはどこにも書かれていません。接点で言われた言葉こそ、自社の一番の強みです。
  8. 本体サイトにある強みを、採用サイトにも転載する
    理念・沿革・数字・受賞歴がコーポレートサイトにはあるのに採用サイトにない、求人媒体には書いた刺さるコピーが自社サイトにない——という企業が複数ありました。新しく作る前に、まず「置き直す」だけで改善します。

ポイントは「差がつく順」に手をつけること。募集要項や事業内容の説明はすでに平均4点台で、ここをさらに磨いても差はつきません。一方、若手の登用実績(2.00点)・Q&A(2.25点)・教育体制(2.73点)はほぼ全社が手つかずです。同じ工数をかけるなら、後者に投じたほうが学生の印象は明確に変わります。

まとめ|「発信量」は足りている。足りないのは「翻訳」

埼玉県内35社の採用サイトを就活生が実際に見て評価した結果、業種を問わず同じ構造が浮かび上がりました。改めて要点を整理します。

  • 「何をしている会社か」は伝わっている。事業内容4.17点、募集要項4.75点。発信量が足りないわけではない。
  • 伝わっていないのは「誰と働くか」「どう育つか」「その先どうなるか」。「人が見えない」は35社中22社で指摘された最頻出項目。
  • 学生が見ているのは3つの問いだけ。どんな仕事か/どんな人と働くか/自分と合うか。土台に「長く働けるか」がある。
  • 最大の課題は「魅力がない」ことではなく「魅力が翻訳されていない」こと。学生が最も高く評価したのは電話対応の人柄であり、それはWebのどこにも書かれていなかった。
  • 差がつくのは、全社が手つかずの領域。若手の登用実績・Q&A・教育体制・数字の開示。ここは少し手を入れるだけで抜きん出られる。

採用サイトの改善というと、大規模なリニューアルや制作費の話になりがちです。しかし今回の調査が示しているのは、多くの企業に必要なのは新しい素材ではなく、すでに持っているものを学生が見る場所に置き直す“翻訳”の作業だということです。社員インタビューを3人分、1年目の1日を1ページ、数字を5つ。この3つだけでも、学生から見た自社の景色は確実に変わります。

著者:株式会社シンミドウ

埼玉県さいたま市を拠点とする経営・採用・デジタルマーケティングのコンサルティング会社(2008年設立)。中小企業を中心に、戦略立案から実行支援まで一気通貫で支援。テレビ埼玉「彩の国 就活天国!!」番組監修、採用管理ツール「taskaru」などを運営。

採用サイト・採用ブランディングのご相談について

「自社の採用サイトは、学生からどう見えているのか」——その答えは、社内で議論していても出てきません。今回の調査で分かったとおり、自社では当たり前だと思っている強みほど、Webに書かれていないためです。

採用サイト診断・採用ブランディングのご相談について

株式会社シンミドウでは、埼玉県内における豊富な新卒・中途採用支援の実績をもとに、貴社の採用サイトを学生・求職者の視点でチェックし、改善の優先順位をご提案しています。採用サイトの制作・リニューアル、採用ブランディングの設計、社員インタビューや採用動画の企画・制作までワンストップで対応可能です。

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